「シーラという子」
トリイ・L・ヘイデン 早川書房


幼い頃から虐待を受け続けた6歳の女の子シーラが、施設の教師トリイと出会い、かたくなな心が開いていくその様子を、教師自身が綴った本当にあったお話です。一年ほど前にはじめてこの本を手にした時には、悲しさや憤りの感情に私の心は揺らぎ、人が心の中心に持っているあたたかなものより、環境等によって作られていったであろう、人が人を傷つけてしまう刺すような冷たい、心の外側の部分ばかりを感じとってしまった私でした。幼児虐待のことは話には聞いていましたが、実際にこうやって文章で読むといたたまれなくて、切なくて、心が痛んでどうしようもなかったのです。
もう一度この本を読み返した時、最初読んだ時には感じなかった、被害者、弱者と言われている子供たちが持っている勇気とか、そこからはい上がろうとする強さなどが感じられ、こちらまで励まされるようでした。

辛い出来事に会った時、胸の奥底にその出来事を封印してしまって前より明るく振る舞おうとする女の子シーラですが、彼女がほんとうの優しさにふれて、はじめて涙を流す、そういう瞬間があります。彼女の心の奥にあった黒くて大きなカタマリが涙で溶けていく、そういうシーンにとても感動したのですよ。心が開いていく時ってなぜか痛みがともない、その痛みからいつも逃げ腰になっている私には、シーラがとても立派に見えてしまったのです。
このお話には「星の王子さま」の本のことがよく出てきます。幼いシーラがこの本を何度も読み返すことで、愛する人との別れなど、辛い出来事から乗り越えようとするその姿に感動してしまいました。
「かわいそうな女の子・・・」 ただ同情して憐れむだけではなく、ひとりの女の子シーラから、感情を解放させてあげることの大切さや、人が立ち直ろうとする勇気のようなものを教えてもらった気がして、二度目に読み返した後には、少しだけ私の心も強くなったような気がしました。