天童荒太


永遠の仔(幻冬舎)

もっとおどろおどろしい、やりきれないほどの暗い小説をイメージしていました。たしかに登場人物の過去、そこで受けたあまりにも大きな傷、ぽっかり空いた心の穴にしのびよる闇はあまりにも深い。人が持つどうしようもない弱い部分と愛を求める心…こんなにも赤裸々に表現されたお話があったでしょうか。むき出しの思いがゴツゴツと当たり、大きく心に響きます。
かなり厚みのある上下2冊の本ですが、ミステリーとしての面白さもじゅうぶんに味わえて、読み始めると一気に読んでしまいました。トラウマから生じる多くの悲劇たち。緊張でこわばった私の心が最後の2行の言葉で一気にとけて、読みながら涙がとまらなかったのです。
親からの虐待によって心に大きな傷を受けた3人の主人公たち。生きること、こんな単純なことさえ困難な辛い毎日をおくります。やっとできた愛する人、愛してくれる人の存在さえ信じられなくて、離れていこうとするその姿に、「誰か救ってあげて!」思わず心の中で叫んでしまいました。
現実から逃げてばかりいた主人公たちが、現実に立ち向かってしっかり生きていこうとする、その姿が胸をうちます。深い闇の中、少しの光と愛にすがろうとする登場人物たちの姿。読みながら愛おしく思えてきたのです。

他人との関係にいつも逃げ腰であったり、逆に他人に献身的に生きる、そんな生き方しかできなかった彼等が、
「ただ生きているだけでいいんだ」
そう思えるまでの長く苦しい魂の旅の物語。著者が真摯な姿勢でまっすぐにこのお話を書いたことが伝わります。