下田治美


●愛を乞うひと(角川文庫)

著者下田治美さんのエッセイが大好きで、うちに何冊か彼女の本が置いてあって、子育てに悩んだり、落ちこんだりした時によく読んでいます。
そんな大好きな作者が書いたこの長編は、映画化されるほど話題になりました。

母親の娘(主人公)に対する虐待のシーンは凄まじくて、主人公はどんなに母親に虐待されても母親にすがり、愛を乞います。
「私を愛して欲しい」
「自分を愛してもらえるならなんでもする」
そのシーンはこちらの涙を誘う悲しいシーンには違いありませんが、人は愛なしでは生きていけない・・とくに子供にとって親に愛されることがどんなに大切なことなのか、あらためて気づかせてくれます。そしてそれは、子供がいる私にはハッとさせられるシーンでもあったのです。

父親の遺骨探しの旅ではいろんな人たちの暖かい言葉、援助、親切を受ける主人公・・・。
とても重いテーマを扱っていながらこの小説がそんなに暗く沈鬱なお話で終わらないのは、どんなに絶望的な状況においても必ず主人公をあたたかく見守り、手をさしのべてくれる人がいるからなのでしょうね。まわりが暗い時ほど、ちょっとした優しさや思いやりが大きなともしびになって人の心を救ってくれるのでしょうか。
・・というものの結びつきのやっかいな側面についても、深く考えさせられるお話でした。