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南木佳士



●医学生(文春文庫)

新設されたばかりの秋田大学医学部が舞台になった青春小説。 著者自身が秋田大学出身の医師ということもあり、描かれてある内容がリアルに伝わってきます。
雪深い北国にどちらかといえば挫折感を抱えて集まってきた4人の主人公たち。それぞれ悩みや事情を抱えながらも、医師を目指して進んでいきます。
「いったい自分はなにやっているんだろう」
壊れた夢。遠い地で死体を解剖している自分の姿に問いかけながらも、進んでいる道の果てに見えるのは医療の世界。
「自分は流されている・・
情けない思いにかられながらも、気がつくと人を救う道を歩いている彼等の姿が印象的。外部から見ると素敵に見える職業だとか充実していそうな私生活。当の本人はそうでもないと思っていること、もしかしたら多いのかもしれません。

「主人公たちの年齢のころ、私はなにをしていたのだろう?」
読みながら自分自身の青春を振り返ってみます。恋愛問題で悩み胃を悪くしていた自分。いろんなことに上手に立ち回れなくて、まわりとぎくしゃくしていた自分の姿を思い出します。
青春というのはいつの時代でもすこぶるみっともないもの・・
著者のあとがきの言葉。ちっともかっこよくなんかなくて、毎日流されて生きていくうちに、でもいつのまにか開けている自分の道。頑張ることももちろん大切だけど、流れに身を任せて始めて見えてくるものもあるのかもしれません。

学校の授業、人体解剖の実習で学んだものは人はかならず死ぬ、という事実。それは4人の若者たちの考え、生活に少なからず影響をおよぼしていきます。死生観が変わるほどの学習を経て身についていく医療への道・・そこを歩く彼等がけっして聖人君主ではなく、とても人間くさい人たちであることが面白いと思いました。