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桐野夏生





●ローズガーデン(講談社)

なにかに溺れて、そこから抜け出せない人たちを描いたお話が4編収められています。
本の中で繰り広げられる濃厚な世界・・ 外見や職業、表面だけでは分からないもうひとつの顔。悪意から生まれる犯罪がある一方で寂しさから罪を犯す人もいるという事実。ミステリー仕立てのテレビドラマを見ているような小説はサラッと軽い感じで読めます。
風景などの描写はたくみで、行ったことがない場所でも、まるで自分がそこにいるかのような錯覚をおぼえるほど。細部にわたるそれらの表現は、きれいなものと同時にきたないもの、おぞましいものも容赦なく描き出しています。

四つのお話の中では表題にもなっている「ローズガーデン」がいちばん好き。あと一歩でグロテスクになってしまいそう、そのぎりぎりのところで官能の世界を表している、その感じがスリリングでよかった。
そこにあるのはダークな世界のはずなにのに、どこかお洒落な感覚を見出してしまうのは、主人公のミロがただ淫らなだけではなく、男性を虜にする知性も持ちえているからなのかも。