石垣りん


石垣りん詩集(ハルキ文庫)

詩集を手にしたのは久しぶり。美しい言葉しか信用しない人、言葉によけいな飾りをつけたがる人…詩人、とよばれている人たちの私の勝手なイメージ、思いこみでした。あまり気乗りしないまま手にとったものの、読み始めると石垣りんさんの言葉がストレートに伝わってきて、ドキドキしてしまったのです。ただあまい言葉を並べているだけではなく、けっしてきれいごとではない著者の思いが日常の言葉を借りてそこにある、という感じ。詩によっては涙が出てしまったほど。
家族たちを、愛、という名のもとに背負っていかなければならなかった、著者のやるせない思いが詩たちにこめられています。同じ屋根の下、家族と同じ便器を使うことすら耐えられない、日々の現実に押しつぶされそうになった著者のやるせない思いがほとばしり、言葉になってきらめいています。

愛、家族、いたわり・・温かく美しいひびきを持った文章を私たちはよく目にします。現実に向かい日々戦っている人にとっては、あまったるい感傷より力強い生活者の言葉のほうが合っているはず。あくまでも自分の言葉で書き連ねた石垣さんの詩は、さりげないのだけど奥行きが深くて、読むと感心してしまう・・・。おすすめです。
家族からも、家からも、隣人からも、勤め先からも離れ、独りで、自立して生きる魂の世界を持つこと・・・粕谷栄市さんが書かれた解説の一文です。詩を書くこと、言葉を紡ぐことがそうだとしたら、私たちはもっと自由になれるはず。