銀色夏生


●散歩とおやつ(角川文庫)

書店で見るたびに気にはなっていましたが、銀色夏生さんの本を読むのはこの本がはじめて。題名に惹かれて買った私です。この本は彼女の毎日の暮らしぶりが肩の力が抜けた感じでさらさらと描かれている日記。それはけっしてお洒落な毎日ではないのだけど、彼女がとても自然体で生活しているのが伝わってきて、読み終えた後でとても気持ちが楽になる、そんな本でした。
銀色夏生さんと共に暮らしている家族たちとの日常…時々起こるいろんなハプニングを彼女らしくやり過ごしていく、そんな様子が描かれているこの本は、著者のお茶目な一面を知ることができて楽しい。

やってくるものをただ受けとめ、すぎるものはそれにまかせ、自分もこの時に身をまかせて生きていきたい
こんな言葉があとがきに書かれてあるのですが、そんな彼女の思いがさりげない文章のあちこちから感じられたことは、きっと彼女のまん中に「これだけは守っていきたい」だとか、「これが私にとっての真実…」といったふうな一本のシンがきちんとあるからなのでしょうね。

妊娠時に余儀なくされた入院生活のことを「ほおずきの中のような暮らし」と表現した、そんな彼女の感性はやはりすごいなあ、と感心してしまった私です。
これを機会に、過去のつれづれノートもぜひ読んでみたいと思いました。


バラ色の雲(角川文庫)

子供って天使などではけっしてなくて、時々理不尽なことを言ったり、日によってはちょぴり意地悪だったり…だけどそんな子供(あーぼう)のことを丸ごと愛する著者夏生さんのママぶりがよかった。
大きな母の愛で包み込む・・というのではなくて、子供といっしょになって普通の日々を楽しんでいる、その様子がよかったのです。
著者の日記にもなっているこの本、旦那さんに好きな人ができて一方的に別れを言い出される、というとても辛い局面のことも書かれています。たとえ元気がなくなってもいつも心が明るい方向に向かっている彼女ですが、この突然の出来事にはさすがに落ち込んでしまって、食事もノド通らない様子…。自分の辛い気持ちを隠さないで短い言葉で素直に書いています。

「今、すごく悲しいことがあって立ち直れないかも知れないと思っている人へ、私は、三ヶ月だけガンしなさいと言いたい。もうこれから先に楽しいことはないだろうと思っている人へ、三ヶ月、とりあえず三ヶ月だけ生きてみなさいと。」
文中の夏生さんの言葉…。とても説得力があって私の心にひびきます。自分の気持ちにいつも言葉で向き合っている、そんな彼女が好きです。表面だけをなぞるのではなくて、心の奥にズシンとひびくから。

毎日食べた美味しいものの話、けしごむキャッチャーでとったかわいい消しゴムのこと、彼女が描いた似顔絵つきの芸能人のウワサ話・・・ 読んでいると思わすフフと顔がほころんでしまう、そんな楽しいお話もいっぱいつまっています。


●空の遠くに(角川文庫)

著者の心にもつ「厳しさ」みたいなものが頁から伝わってきて、読んでいるうちにこちらの背筋までもがシャンとなりそう、そんな今回のつれづれノートでした。
イカちん(旦那さん)にたいする視線、描き方が明らかに前回のつれづれノートとは変わっていて、彼女の本を読むたびに思う、「すべてのものは変化している」ということをあらためて心にきざみます。
だれからも強制されることを嫌い、いつも自由でありたいと願い、それを実行している著者。自由でいられる環境を作るまで自分がどんなに努力をしてきたか、そのことも述べています。
自分はなにが好きなのか、どんなことをしている時がいちばん幸せなのか…それって他人から教わるものではなくて、自分で考え、道は自分自身で切り開いていくものなのですね。著者のメッセージが伝わってきます。

窓の外の青い空を指さして、「スーッと自分の道が見える」と言った夏生さん。二度目の結婚、ふたり目の出産を経験してそれらがひと段落した今、これから新しい第一歩を踏み出していくのでしょうね。彼女の書くものが好きなひとりの読者として、とても楽しみ。
銀色さんが大好きだという「率直な人」・・ 私もそんなふうだったらいいな。