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エッセイ
(女性)



●「夫の浮わ気」黒木 瞳(幻冬舎)

世界一夫が好きです。
だから、浮わ気をされては困ります。

女優でもある著者、黒木瞳さんのエッセイの中の一文。この言葉、シンプルなのだけど重くて心にズシンと伝わります。彼女はとにかく旦那さんのことが好きで好きでしかたがないみたい。その思いがあんまり強いものだから、旦那さんのちょっとした行動のひとつひとつがとても気になってしまい、何かあるそのたびに彼女の心は揺れ、時々突飛な行動をとっては彼女の夫を、そして自分自身をも戸惑わせてしまうのです。

お高くとまっている・・そんなイメージがあった黒木瞳さんですが、このエッセイを読んで彼女に親しみがわいてしまいました。感受性が人一倍強くてちょっぴり情緒不安定、でもとてもかわいい女性…女優ではない素顔の彼女がこの本にはたくさん登場します。
夕方には夕焼け空をながめて、「明日もいいお日和ね」そう呟きたいという彼女の言葉にとても共鳴した私。普通の暮らし、平凡な毎日を慈しみ大切したい、そう強く願うのは私もいっしょだから。
このエッセイの中には、読んでいる私までもが「あやしい」そう思わせてしまうような黒木さんの旦那さんの不審な行動の数々…それらを彼女はサラッと書いています。
「わたしの夫は浮気をしたことがないそうです」
本の最後をそう締めくくった彼女は、やはりとても強い女性・・・
そう思ったのは私だけかしら?


●「だって欲しいんだもん!」中村 うさぎ(角川文庫)

借金女王のビンボー日記… こんな副題がついているこの本、著者の半端ではない買い物ぶりがとにかく凄いのです。でも威勢がいい文章のせいかしら、読んでいるうちに痛快な気分にさえなっていた私・・75万円のカーテン、90万円のソファセット…その買い物ぶりはどんどんエスカレートするばかりなのですが、問題なのはお金がないのに買い物をしてしまうこと。当然借金はどんどん増え、しまいには水道まで止められてしまいます。

最初はその買い物ぶりがユーモアたっぷりの文体と伴い笑いながら読んでいた私ですが、私の顔からだんだんと笑顔が消えていきます。
「もしかして・・?」
そう、私の想像はあたっていて、著者のうさぎさんは心の病、買い物依存症だったのです。彼女もそのことに気づき、専門の病院にかかります。
この文庫本の解説を書かれた方は精神科医の斎藤 学さん。以前彼が翻訳したやはり買い物依存症のことをとりあげた本『買い物しすぎる女たち』を読んだのですが、同じ症状をとりあげていながらこんなにも違ったものになったこと、そのことがとても興味深かった私です。深刻な状況を吹き飛ばすかのように、悩みを笑いに転化していく著者うさぎさんのパワーはすごいと思いました。
あの石川啄木も、うさぎさんにかかったらただの怠け者の浪費家…彼女に言わせると「ブンガクの人」というのはイイカゲンなものなのだそうです。

「もう〜好きなこと言って・・」そう思いながらもナットクしてしまった私。


●「優しい時間」・八千草 薫(世界文化社)

ネットのお友だち、野の花さんが薦めてくださった本です。文章がその人を表す、というのなら、まさに彼女の書く文章は私から見た八千草 薫さんそのまま。やさしくてたおやかで、そこにはゆったりとした時間が流れているのを感じます。
自然体に生きる…よく聞く言葉ですが実際に実行にうつすのはむずかしいもの。だけど彼女は華やかな女優という職業でありながら、いつも自分の心に素直に生きているのをこの本から感じました。
山歩きという旦那さんと同じ趣味を楽しみ、動物たちや草花に愛情を注ぎ、悲しいことや辛いことはどこかひょうひょうとやり過ごしていく・・そんな彼女の生き方に憧れてしまった私。
歩くことは、本を読むのと同じような、静かな世界に浸れる時間・・・ この言葉から、彼女が心の内側にある世界もとても大切にされていること、このことが伝わってきて嬉しくなってしまったのです。
好きで彼女がよく訪れている国ネパールのことを、「慢性の貧しさのある国」と彼女は表現しています。アフリカに代表される、急性の貧しさのほうばかりみんなが気をとられている、そのことを危惧している一文がとても印象に残っています。

強さと弱さ、活発な活動と心の内省・・・ 八千草さんはとてもバランスのいい人。
”人”だもの、どうしようもない弱さを抱えながらも、まわりの小さな自然を慈しみながら、彼女のようにどこかひょうひょうと生きていけるといいな。


●「ファイト!」・武田麻弓(幻冬舎)

先月放送された「ザ・ノンフィクション」というテレビ番組でこの本の著者のことが取りあげられていて、それを見た私は彼女の書かれた本(自伝)がとても読みたくて・・・
だからこの本を見つけた時はほんと嬉しかった。この本の著者のことを、障害にもめげないで強く生きてきたひとりの女性…というふうにとらえることももちろんできますが、彼女の持つ障害、聾唖である、ということより、ひとりの女性としての生き方にとても興味を持ってしまったのです。
自分の考えや欲望にあまりにも正直すぎるために他人とのあいだに摩擦がたくさん生じてしまい、でもそれにも負けないでいつも前を向いている麻弓さん。
困難を避けるよりもむしろそれに立ち向かっていこうとする、そんな彼女の生き方からは、強さと、あるしたたかさを感じました。

男性、とくに黒人が大好きで、かつて風俗嬢で、HIVポジティブのギャングと結婚したことがある麻弓さん・・。その生き方はけっして公明正大でもないし、道徳的には正しいとは言えないかもしれませんが、読み終わった後で元気が出てくる、そんな本だったのです。
聾唖というのは彼女の持つほんの一面、個性のひとつであって、そんなことよりも彼女のいつも前向きで自分に正直に生きてきた姿勢が、とても印象に残りました。


●『シンプル・シック 暮らしのレシピ』・有元葉子(三笹書房)

「なんてセンスのいい人なのでしょう」
女性誌などで有元葉子のテーブルセッティング、その巧みな器づかいや料理の盛りつけなどを目にするたび、感嘆のため息をもらしていた私です。
雑誌のグラビアからうかがえる、食を中心にしたセンスのいい暮らしぶり。でもこうやって活字で読むのは初めてだったのですが、暮らし、食、インテリア、旅・・彼女の強いこだわりが伝わってきます。 「毎日の生活こそを楽しみたい」そう願っている私だから、彼女のおしゃれなこだわりたちが嬉しくなってしまったのです。
心地よい暮らし、イコール自分サイズの暮らし。生活の一場面を自分が選んだ美しいもので彩ることができたらどんなにシアワセなことでしょう…この本が語ってくれます。 暮らしの中にあるアート

テイストがバラバラで寄せ集めのようなインテリアをまとまりのある空間にしている土っぽいカゴたち。日本の家に合う、素朴で静謐感のある韓国の家具や器。いつものキッチンマットを紙にして、色と素材を楽しんでみる…すぐにでも真似したくなるような有元さん流のモノ選びのこだわりが読んでいて楽しい。
物ひとつとってもその役割を決めつけてしまわないで、頭を柔軟にしていろんなシーンでそれを使ってみる…見慣れた雑貨が頭で考えることによって、またちがう場面で息を吹き返すなんて、素敵!


●『愛情生活』・荒木陽子(作品社)

42歳で病気のために亡くなってしまった、荒木陽子のエッセイ集。
写真家アラーキーの奥さんということで、その姿を彼の写真集で目にしている方も多いと思います。こんなこと書くと失礼かもしれませんが、彼女はごく普通の人といった容姿で、特別なオーラみたいたものがあまり感じられません。でもなにかの拍子にとても色っぽい表情を見せ、そんな時、同性ながらドキッとしてしまう。それは写真家である夫の腕もあるのでしょうが、彼女から発せられるあくまでもいい意味でのエッチさをこの本から感じた時、なっとくしてしまったのです。

陽子さんの食にたいする強いこだわり…食の快楽と身体の快楽がいつしか文章の中で溶け合い、読んでいる私をどぎまぎさせます。過激な表現が多いのに、不思議といやらしさが感じられないのは彼女の性格、あっさりとテンポよく書かれた文章のせいなのでしょうか。
アラーキーがレンズを通して妻である陽子さんのすべてをはぎ取って私たちに見せたように、彼女は文章によって素顔のアラーキーの姿を本の中でくっきりと浮かび上がらせています。 上っ面だけかっこいいお洒落な生活からは見えてこない、夫婦二人がいつも心地よくいられる関係は、この二人がいつも本音で向き合っているからなのでしょうね。

長く夫婦を続けていると、男と女であることよりもいつしか家族になってしまう・・ その安堵感と馴れ合い。普段はあまり語ることのない夫婦間のセクシュアリティについて、そっと私たちに問いかけてくれるような本。
この本を読み終わったとき、夫とまた旅行に出かけたくなりました。気を使わないで、ただ自分が自分でいさえすればいい、そんな旅は楽しいから。


●『快速快適 家事のススメ』・百瀬いづみ(三笹書房)

朝日新聞の家庭欄、「ネオ家事入門」という私の大好きなコーナーがあって、そこに独自の家事アイデアを紹介してくれているのが著者の百瀬いづみさん。
手間と時間をかけることが美徳・・そんな今までの風潮を吹き飛ばしてしまう、現代にあった家事のやり方のノウハウがこの本にはたくさんつまっています。じつは彼女の家事術、私もすでに実行しているものもいくつかあって、そこのぶぶんにくると、「私もやってる、おんなじだー」と、うれしさに思わす顔がほころぶのがわかりました。

忙しい生活をおくっている人たちで情報を交換しあい、そこから生まれたという家事の効率化。手抜きとは言わせない、賢い知恵がつまったそれらの術は、読んでいると「へーぇ」と感心することばかり。
石けん、重曹、酢・・エコロジー生活の三種の神器がこの本の中でもお掃除方法にしっかりと登場。燃えるものを指標に選ぶとインテリアは不思議と統一される、と著者は言います。シンプルで環境にいい生活がそのまま家事の効率化につながっていくなんて、嬉しいと思いませんか。

やわらかい頭からうまれてくる家事のアイデアたちは今すぐにでも真似したくなるものばかり。 生協の個人宅配、クリーニング店の利用、食器洗い機や衣類乾燥機の利便性… 一見お金がかかってしまいそうな選択が、じつはそうでもないことも著者は具体的に述べられていて、いつも当たり前のようにおこなっている日々の雑事をもう一度考え直してみる、そのことの大切さを感じました。
本を読み終わったあと、しゅろと縄だけで作られたほうきが欲しくなった私です。