エッセイ
(女性)


●「夢を実現する3冊の手帖づくり」・中山庸子(講談社)

中山庸子さんの書かれたものははじめて読んだ私ですが、作者の強い上昇志向、願いは絶対にかなうという信念の強さにはちょっとビックリ。
すごいのは彼女は本当にその願ったもののすべてを手に入れたということ。
読んでいると、ちょっと息切れがしそうなほどのあまりにものパワーに、ちょっと引き気味だった私なのですが、自分がこれだと思ったことはきちんと実行に移す、そのバイタリティには感心してしまいました。

ワーッと自分を強く出して生きてきた彼女の生き方が文章にそのまま表れていて、その強さが彼女の書く文章に説得力を与えているのかな、なんて思ってしまいました。
自分の夢を明確にするために、自分の夢を、願いを、ノートに記することを作者はすすめています。
潜在化にある自分の願望を顕在化まで引き上げる夢ノートの提案です。
私もさっそくやってみようかしら・・・


●「イタリアン・カップチーノをどうぞ」・内田洋子(PHP文庫)

ミラノ、ローマ、ヴェネツィア…雑誌のグラビアなどで目にするイタリアは、ウットリするほどの素敵な地。人はみんな陽気で、お洒落で、そして食べ物はすこぶる美味しい・・・
でもここに描かれているイタリアはちょっと違うのです。私が知らなかった素顔のイタリアが、実際にこの地に何年も住んだことがある著者によってイキイキと描かれています。イタリアの素晴らしさや魅力はもちろん、雑誌なのでは紹介されていない暗部にもきちんと触れられているせいか、読み進んでいくうちにイタリアにとても親近感が湧いてきた私
でも、国が変わっただけで、こうまで風習やら生活習慣が変わるものかと、驚かされたのもたしかなのです。人にも長所があれば必ず欠点があるように、ひとつの国にもきれい事ではない深い影の部分が存在していて、イタリアが大好きだと豪語する著者だけに、そんな欠点も含めて丸ごとこの国を愛しているのが伝わってきました。

空気の缶詰や、シートベルトの絵が印刷されたTシャツが堂々と売られているナポリに行ったら、どんなに落ち込んでいても元気が出てきそう!
ただの観光ガイドとは違う、とても面白い本でした。


●「脂肪」・中島唱子(新潮文庫)

ドラマ『ふぞろいの林檎たち』でおなじみの女優、中島唱子さんが書かれたエッセイです。感受性の強い彼女が書いた文章はとても魅力があって、引きこまれるように一気に読んでしまいました。彼女はいい意味で”毒”のある女性。その毒気のある部分がこの本に載せられているアラーキーが撮った彼女の写真と一緒になって、強烈にこちらに訴えてくるものがあるようです。

彼女の生い立ち、育った環境ははっきり言って悲惨です。それらも隠さないで書かれてあるのですが、けっしてお涙ちょうだい風ではなくて、ある”いさぎよさ”のようなものが感じられました。そのいさぎよさはきっと彼女の持つ個性なのでしょうが、
「どうせ、私なんか…」
そんなことを言って下向きで落ち込んでいる方たちを吹き飛ばしてしまいそうな、そんな励ましのパワーすら感じられます。

今まで自分の中に溜めておいたモヤモヤした感情を、30kgの脂肪と一緒に吐き出してしまった彼女・・・
アラーキーが撮った彼女の写真もよくて、おすすめの1冊です。


●「かすみ草のおねえさん」・俵 万智(文春文庫)

歌人、俵 万智さんのエッセイ集です。『サラダ記念日』などの歌集を読むと彼女のきれいな言葉使いや豊かな感性にハッとさせれてしまった私ですが、テレビや雑誌等で見る彼女からは「しっかりした真っ直ぐな真面目な人」という印象を受け、それは私とは違った女性、という印象でもあったのです。上手く言えないのですが…。

このエッセイを読んでいると黒の器、パソコン通信、赤毛のアン、『きらきらひかる』のおはなし、お花…好きなものに共通点がいっぱいで前より彼女が身近に感じられて、嬉しくなってしまいました。いつも物事を素直に見つめて、しなやかでほんと真っ直ぐな人・・・
新宿の街ではホッとする表情に出会うことが多い、というくだりなんか、すごく新鮮でした。そんなこと一度だって考えたことがなかったから。

万智さんは言葉を操るのが上手いのではなくて、感じる心が豊かなのかな、なんて、そんなことをしみじみと思ってしまったのです。


●「季節のかたみ」・幸田 文(講談社文庫)

幸田露伴の娘、文さんのエッセイです。美しい文章は読み手である私を何度も立ちどまらせ、その文章をかみしめ、そして次に進んでいく…そんな感じで読み進んでいったせいなのでしょうか、1冊読み終わった時には思いがけずにとても時間が経っていました。
どちらかといえばもの静かな文章なのだけど、ハッとさせられる箇所がけっこうあって、時にはするどい視線でいろんな事柄を見つめ、著者の豊かな感受性でそれらをとらえて文章にしていく・・・ だからこそ、こんなに情感の豊かなきれいな文章が生み出されたのでしょうね。

日々の暮らしを味わうことなく、ただ性急につきぬけていく、そういう生き方ではなく、時には立ち止まり、ゆっくりと味わい感じることから生まれてくるものが持つ、大きさや静かさ・・・ それは、 いつのまにか心のそうぞうしい人になってきている私たちに、やさしく問いかけてくれるよう。

幼い頃母を失ってしまった著者は、ひとりで過ごすことの多かった環境から、移りゆく季節から楽しみを得、不幸せを下敷きにして季節を楽しむ幸せを得た、と言います。季節によって情感を、優しさを与えてもらったというその言葉は私の胸に強く沁みました。季節に引っ張られて前向きに生きてきた、という幸田 文さんの言葉は、私の心にいつまでもとどめておきたい、そんな言葉のひとつになったようです。
これから何度でも読み返していきたい、そんな本だと思いました。


●「私のスタイルを探して」・光野 桃(新潮文庫)

その世界で第一人者と言われている人たちが、どんなに自分の仕事を、その世界を大切にして、こだわり追究しているのか・・・ この本を読んで私がいちばん感じたこと。ファッションの世界で生きている彼女が、若い時は「自分だけがおしゃれではい」なんて悩んでいたことはとても意外だったのですが、その悩みやコンプレックスが彼女をいっそう高める原動力にもなったのでしょうね。

自分が本当に似合う服に辿りつくためには、まず自分自身を知らなければならない、そう彼女は言います。自分自身を知ること…一見簡単そうに見えて、とても大変なこと。自分を客観的に見るという作業を「おしゃれな女性」と人から言われるために、私も頑張ってみようかしら。
自分のベーシックはもっていたほうがいい、という彼女の言葉もとても印象に残りました。

おしゃれ=シンプル」と言われ続けてきた日本のファッションについても光野さんは問題点を投げかけていて、常にシンプルを心がけてきた私は、ハッとさせられてしまったのです。艶やかに映える色・・・ そんな色のことなどもこれからは考えていきたい、そう思いました。


●「早起きのブレックファースト」・堀井和子(KKベストセラーズ)

窓から見える、季節によって変化を見せる木々、お家で焼くシンプルなパン、お家のまわりを歩く気ままな散歩、赤の格子のクロス、ソファーに横たわって楽しむ読書、表情を持つ素朴なカゴたち… 大切にしているもの、好きなものの共通点がこんなにもあって、本を読みながらすっかり嬉しくなってしまったのです。

堀井さんのお名前はもうかなり前になりますが、ある女性向けの雑誌で知りました。たしかキッチンで使っているお気に入りの物を見せてください、というような企画だったと思うのですが、他の有名な料理研究家の方たちが、お洒落で、どちらかといえば取りすました感じのキッチン用品を紹介されていたのに対して、堀井さんが紹介された物はけっしてお洒落ではないのだけど、とても使い勝手がよさそうな堅実なものばかり。全部使いこまれた感じがとてもよくて、この物たちを見た時、私は一目で彼女のファンになってしまいました。

この本にはそんな彼女の魅力でいっぱい。おしゃれにかっこうよく都会的に生活することよりも、あくまでも自然体でゆっくり堅実に生きる、そんな彼女の素敵さが伝わってきます。あと、ベーシックな真面目さがある方っていいな、とも思いました。
食べること、そのまわりのことにこだわって大切に生きていくことから生まれる心地よさ… それらがこの本からたくさん伝わってきます。