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エッセイ(男性)



●「ニッポン見聞録」・トム・リード(講談社)

アメリカのジャーナリストである著者のトム・リードさんが、5年間の日本での生活をとおして書かれた日本の姿は、時にはやさしく、でも時にはドキッとするほど辛辣な表現で描かれています。
だけど全体をとおしての文章のトーンはやさしくて、あまり肩のこらない文章がとても読みやすかったのです。
この本には宮沢りえちゃんのヘアヌードから広島の原爆投下問題にいたるまで、いろいろな内容が書かれてありますが、政治から日常の出来事まで書かれたこの本を、とても興味深く読んでしまいました。
日本に住んで生活していると当たり前のようになっている事柄が、外人の方から見るとどんなにカルチャーショックをあたえるかということ。そしてそれは世界の中の日本というものを知る、いいきっかけにもなったようです。日本を深く知るということは、世界を知るということでもあるようですね。

この本の最後に、作者が大好きだというドリカムの歌の歌詞が載せられているのですが、あらためて文章になったものを読むと、ほんと、いい詩ですよね〜。
とくに『晴れたらいいね』の詩を読んでいるうちにいろんな懐かしい情景が浮かんできて、思わず涙が出てしまった私・・・


●「被写体」・三浦友和(マガジンハウス)

とても真面目で誠実な人…これがテレビ画面から感じられる三浦友和さんのイメージ。そして彼の書かれたこの本からも、やはり彼の率直さ、誠実さが伝わってきました。
家族は守る・・この言葉で終わっているこの本は、百恵さんというかつて大スターだった女性を妻にしたことによる、十数年にもおよぶ芸能マスコミの行きすぎた取材、報道との戦いが真っ直ぐな言葉たちで書かれています。マスコミのターゲットにされた家族たちに対する尋常ではない取材のあり方はもちろん、情報氾濫、過多だと言われている日本で、肝心な情報はきちんと流されていないことや、宮沢りえさんに対する報道のあり方を例にあげて、それがいじめの構造となんら代わりがないことも指摘しています。

「物を書くということは固有名詞を出さなくとかならず誰かを傷つける」
本を出すことを彼にすすめた方からの、彼あての手紙にあった一文です。この言葉に私はドキッとしてしまいました。文章を書くということは、それがけっして意図的ではないにしろ誰かを傷つけてしまうものなのでしょうか…?

激しいマスコミからの攻勢からある時は思わず暴力をふるってしまい、そんなにしてまでも家族を守ってきた三浦さん。家族の絆が希薄になっている、なんてよく言われていますが、この本を読むとそうではないことが分かって心が温まりました。
結婚後の百恵さんの様子をたまに週刊誌やワイドショーで見ることがありましたが、彼女自身もほんと辛い思いをたくさんされたようです。行き過ぎる取材や報道に対する厳しい目を一視聴者の私たちが持つこと、そのことの大切さもこの本を読んで今さらのように思ったのです。


「インターネット印税生活入門」
  立石洋一(メディアファクトリー)

みずからを産直(インターネット)作家と名乗る立石洋一さんの書かれたこの本、とても面白かったです。
ネットで小説売ることのメリットとデメリットが両方きちんと書かれてあり、「文章を読む」という点に関しては「」というメディアのほうがどの点をとっても優れている、そうハッキリとも述べています。自分のホームページの読者数を増やし、いかにたくさんの人にネットから小説を買ってもらうか…そのノウハウが具体的に分かりやすく書かれてあります。
読みやすさを第一に考えた、あくまでも読み手のことを考えたページ作りの大切さ…それは自分のホームページを持っている私が読んでもいろいろと参考になるぶぶんが多かったのです。
大量生産社会、マスコミの問題点についてもこの本では書かれてあって、インターネットというメディアが世界中に向かって開きながらも、一対一、一対多というコミュニケーション本来のあり方を取り戻した媒体だと述べていたのが印象的。

個人のホームページを見ていていつも感じる、作者の「過剰な自意識」…文中の言葉です。ただページを管理しているというだけで、自分がなにか特別な人のような錯覚を起こしやすいこと、それがなんとなく分かるだけに、ドキッとする言葉でした。
ネットで小説を売る…このコンセプトに基づいて書かれてある本ですが、ネットでビジネスをしたいと思っている方、これからホームページを作りたいと思っている人、ページの管理をしている人たちがこの本を読むと、参考になる箇所は多いのではないでしょうか。


●『作家の値うち』・福田和也(飛鳥新社)

エンターティメントと純文学の現役作家の主要作品たちを100点満点で採点したブックガイド。興味津々、といった感じで手にとった本です。
自分が好きな作家やひいきにしている作品が高得点だと喜び、そうでないとガッカリしながら読み進んでいった私。村上春樹など著者が高得点をつけた作家に対する、こちらが戸惑ってしまうほどの手放しの誉め方に対して、渡辺淳一鈴木光司など軒並み低い点が並んだ作家に対しては、「なにもここまで…」と思わせるほど、ズバッと切り込んでいます。たとえ酷評でも長くていねいに書かれたものは、その作家にたいする期待感、だとか著者なりのエールを感じますが、数行で終わらせている評を前に、どんな辛辣な批判の言葉よりも冷たいものを感じた私です。
わざわざ難解な言葉を選んで書いてあるような著者の記述が目立ち、文章からうける印象はどちらかといえば私の苦手とする理屈っぽいタイプ。だけど彼は評論家だもの、ようく考えたらあたりまえのこと、なのですね。

エンターティメントと純文学の違いやそこで活躍している作家の位置づけ、日本文学の未来の予想図、みたいなことがコラムとして書かれてあって、私の知らないことばかりだったので勉強になりました。


●『Tokyo Kitchen 』・小林キユウ(リトル・モア)

東京で暮らしている13人の若者のキッチンが、写真と文章、よく作る料理のレシピつきで紹介されています。
キッチンの紹介のはずが、それぞれの生活と仕事、これからの夢などが語られていて、都会で暮らす男女たちの暮らしの場面・・その切り抜きみたいな本。
紹介されているほとんどが一人暮らし、というせいか、どこかわびしさが感じられるキッチンですが、これからの夢や目標のためにがんばる彼らの生活がそこには詰まっています。
「今はこうだけど、いずれは・・
けっして今が完結(終わり)ではなく、あくまでも通過点だというこだわり。

13人目、最後に紹介されたキッチンは唯一カップルのもの。そのせいか今までとは雰囲気が違っていて、そこにはわびしさが感じられませんでした。愛する人のために料理を作る…安定のあるぬくもりを感じます。
カメラマンである著者はキッチンを独立したものととらえないで、部屋の一部、その人の生活の一場面を切り取って私たちに見せてくれています。裏表紙に載せられた写真はいかにも業界の人、という風貌なのに、みずからを田舎の出身者と名乗り、新宿のOA売場のことを貧血と酸欠のマーケットと書いてしまう、ドキッとしてしまう言葉のセンス。

都築響一の『TOKYO STYLE』、その台所バージョンのような本ですが、ちがうのは文章がこの本のほうがあっとう的に多いということ。一枚の写真から伝わってくるものはもしかして文章よりも大きい・・ 文章をもっと削ってそのぶん写真の数を多くしてほしかった、というのが私のわがままな思いなのです。


●『LOVE論』・つんく(講談社)

読む年代によって感想が変わってしまう、そんな印象をもってしまったミュージシャンつんくの書いた本です。『フェミの嫌われ方』の著者北原みのりが、この本の内容のことを辛辣に批判されていましたが、私にはそこまで酷い内容には思えなくて、つんくのストレートな言葉が意表をつく表現といっしょになり、読みながら「うまい!」なんて感心してしまったぶぶんもいくつか・・
自分ではコンプレックスだと思っていることを、著者のつんくが魅力、なんて言い切っているのだから、女性によってはこの本を読むことで励まされ、勇気がわいてくるのかも。

『LOVE論』で取り上げられているのはASAYANというオーディション番組から出たユニット、「モーニング娘。」と「太陽とシスコムーン」の女性たち。ASAYANは歌手をひとりの人間として、というより商品としての価値ばかりが目立ってしまった番組。それをそのまま受けついでしまったかのようなこの本では、人間性よりも男の子からみたかわいい女、みたいな図式が感じられました。目的、書かれた趣旨が違っているのでしかたがないのでしょうが、彼女たちの仕事である歌手としての評価がないことに違和感を感じてしまったのです。

けっして出しゃばらすに一歩ひいたところのあるかわいい女・・つんくが理想とする女とは、もしかしてたくさんの男性の理想なのかしら。
「男たちを惹きつける女性の魅力とは?」、そんなマニュアル本として読むか、無類の女好きの書いた軽い読み物として読むか…評価がわかれそうな本です。