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荒木スミシ


●シンプルライフ・シンドローム(幻冬舎)

社会に参加しないことで社会に抵抗しているという、定職を持たない男荒木スミシ。物を極力持たない、シンプルライフに徹している女イズミ。いつも透明な存在でいたい、そう願っている少年カオル。いじめを苦に飛び降り自殺してしまったカオルの同級生スミカ。4人の若者が織りなす繊細で感覚豊かな物語。
4人に共通しているのは、他人も自分も傷つけたくない、そう思っていること。純粋できれいなままの自分をいつまでどこまで保てるか…自分を守るため、きれいな存在でいるための彼らの日常が、著者の感性豊かな言葉たちで表現されています。 ひとつひとつの言葉は連なり、短い文章がジクソーパズルのように組み合わされて大きな意味を持つ…斜め読みなどもったいなくて、ゆっくりとかみしめながらこの本を読んでいきました。
大きなコンプレックスを抱えていろんなことにいつも逃げ腰だったカオル。自殺してしまったかつての同級生スミカに導かれるようにして現実に立ち向かっていく力を得ていく、その姿が印象的。

「生きていることは不純だから死んでしまって初めて純粋になれる」
若者の心に巣くう、そんなあやうい気持ちを感じる一方で、傷ついてもいいから、人に、自分の運命にぶつかって生きていってほしい…そんな力強いメッセージも感じました。
この本は、あの阪神淡路大震災直後に書かれたものなのだそうです。