赤毛のアン
モンゴメリ・松本侑子訳(集英社文庫)


子供の頃から何度も読み返した『赤毛のアン』の本。村岡花子氏によって訳され、、児童文学として紹介されていた本ですが、原文にしたがって大人の鑑賞にたえうる小説として新たに松本侑子が訳されたのです。そのせいでしょうか、自然を愛し、夢想がちなロマンチストなアンがより生き生きと表現されています。
アンに出会ったほとんどの人が彼女のことを好きになります。とても不幸な境遇に生まれながら、日々の暮らしの中のほんの小さなことに喜びを見つけるアン。前向きな人がみんな好きなのだと思う。

何度も読んだ本でも大人になって読み返すと、自分が母親になっているということもあって、アンを育てているマリラマシューの立場に立って読んでしまいます。アンが聡明で美しい女性に成長していくのは喜ぶべきことなのに、いずれは自分のもとを去っていくことを思い、悲しみで心が沈むマリラの様子はあまりにもせつない。希望と明るいものでいっぱいの未来をもつアン・・老いていくマリラとマシュー。そこには生きていく人たちの現実、自然の摂理が容赦なく描かれています。

いろいろな事柄を常に斜めに見て、ひねくれて物事をとらえる人たちがいます。一生懸命に生きていくことや真っ直ぐな人たちをどこか中傷する、そんなよくない風潮を感じていました。だからこそ、アンのロマンチックなところ、自分の気持ちに正直な心に触れた時、元気がわいてくるのでしょうね。

*訳者のあとがきによると、この本を訳す時、パソコン通信やインターネットなど、コンピューターを駆使して引用出典探しをされたそうです。何度も手にとり、慣れ親しんだ赤毛のアン。訳者が変わり、また違った大人の読み物としてもどってきたことが嬉しい。